夏至と月と

日の長さが変われば、光が射す角度も違い、影の濃淡のバランスも変わる。

都会の中のふるさと

 

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 私は東京都新宿区西新宿生まれ。

祖母も一緒に暮らしている。その祖母は母親の母親。

父親の実家は秋田県だが、あまり関わりが無く父親が亡くなってからは

もうすっかり疎遠となっている。

 

 なので私のふるさとは生まれ育った新宿ということになる。

昔からそうだが、高層ビルやネオン街をみると

「あーやっと帰ってきたな」

なんて、旅行からの帰路で思うのである。

 

 高校生まではまわりの友達もみな同じように都会が実家という子がほとんどだったので、特別意識もせず何にも思っていなかった。

しかし大学生になると実家が新宿というととても驚かれることが多くなった。みんなの新宿のイメージが歌舞伎町だったからであろう。

「あそこに住めるの」

とみんな不思議がっていたが、私の住んでいたのは西新宿だったので都庁の裏の新宿駅からは少し離れたところだった。そこは本当に普通の住宅地で、幼い頃は八百屋さんも銭湯もお豆腐屋さんもあった。幼稚園や小学校のときは「おはよう」「いってらっしゃい」「おかえりー」と近所の大人たちが声をかけてくれていた。

 

 今はすっかり変わってしまったが、お豆腐屋さんは今も元気におじちゃんとおばちゃんがお豆腐を作っていた。大人になった私が久しぶりにお豆腐を買いにいってもおばちゃんは全然気づかなかった。「こんちは。お久しぶりです。しらたまです。」と声をかけてみると「あらー久しぶりねー。しらたまちゃん」昔と変わらないおばちゃんの独特な言い回しがかえってきた。

 

 山も川も海も、畑も田んぼもない。たくさんの高層ビルにネオンそしておばちゃんのやさしいなつかしい声。ここはやっぱり私のふるさとだ。